帆前掛けの歴史

帆前掛けの歴史

昭和の頃、酒蔵をはじめ力仕事をする人たちに愛用された帆前掛け。
三河地方で繊維産業が盛んであった頃に多くの帆前掛けが生産され日本中に出回りました。

三河地方はガラ紡績が盛んな地でもあり、当初はガラ紡でできた糸を使って小幅織機で織られ、 帆前掛けの特徴である房状の形状にするために横糸を抜く機構の織機で生産されていました。

現在の製造技術

今では生産の非効率もあってガラ紡の糸を入手することすら難しい状況ですが、これまでの技術の蓄積で糸の撚りや整経を調整し、生地の表面や風合いをよりガラ紡糸で織った生地の再現をしたのが、現在使用されている「シャトル式織機」です。

古いもので明治~大正に発明されたシャトル織機が今もなお現役で稼働しています。
厚手の生地を柔らかく織ることができ、みみ(生地端)に縫い目が無いのも特徴の一つ。

しかしながら帆前掛けの生地を生産している機場はもう、片手で数えて余るくらいになってしまい、 糸の規格が工場によって違うのも特徴で個々の職人が長年培ってきた技術、歴史が沢山詰まっています。

帆布との違い

同じ様な生地で帆布がありますが、通常92cm~広幅と多種多様な既製品がある帆布に対して帆前掛けは、旧式の細幅織物の織機で織られるため、最大約80cmくらいの生地幅の効率の悪い機器で手間をかけて作られています。

帆布と大きく違うのは、糸に糊がつかない、帆前掛けを作る専用の規格の糸を使っている点。それは染めることを前提にしているためで、藍染から硫化染めへと変化し、次のような流れで生産します。

昔ながらの風合いの染め物(硫化染め)

  1. 生地を煮て乾かす
  2. 抜染をするための糊付け
  3. 染料の入った瓶に漬ける
  4. 染色
  5. 洗浄
  6. 乾燥

このような流れで近代の工業生産作業では表現できないことを、職人さんの手で一点一点手間と時間をかけることでようやく縫製前の生地が出来上がります。

染める際に糸に糊が付いていると、生地を煮る作業時間を要してしまう、純綿100%だと染料の乗りが悪い為、現在では生地(糸)に少しだけレーヨンを混合させたものに変化しています。
(※ご要望があれば綿100%の生地のご用意は可能です。)

帆前掛けの紐とは

古来より木綿の産地として栄えてきた三河地方においてオリジナル技術である特紡糸の 紡績技術、製織技術を活かし、帆前掛けの紐も当時ならではの特紡糸を使った細幅織物で作られています。

紡績糸は従来、落綿やそのほかの繊維屑を主原料とし、糸の撚り具合からも独特の柔らかい仕上がりが特徴的で身体に馴染むよう考えられています。

ただ帆前掛け専用の織物になっているこの機場も数軒残るのみで、今では帆前掛けの生地と同様にとても希少な伝統織物です。

実際に製造過程を目の前にするとその織機の仕組み、スケールの大きさに圧巻で感動させられるほど。

使用される特紡糸も全てオリジナルで染め上げたものを使用しており、糸の色・太さ・経糸の本数も職人によって異なる為、それぞれの職人の歴史を感じられるのも帆前掛けの紐ならでは。


当社の取り組み

帆前掛けの生地を使ったBAGや小物、雑貨など「meguri」というブランドで展開しております。

また愛知県三河地方にて製造される三河木綿、刺し子を使った生地で作った「華火(はなび)」というブランドもございます。

企画から縫製まで全て当社にて責任を持って行っております。